オーダーメイドデニム Vol.02 「サンプル縫製」
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最終更新日:2017/07/23
オーダーメイドデニム, ユウジ 記事, 服
オーダーメイドデニムについて。
前回はパターン製作の依頼まで終わったので、
今回はその一週間後、出来上がったパターンをウッキウキしながら受け取ったあとの作業。
考えたものが現実化する時というのはなぜあんなにもどきどきするものなのか。
パタンナーさんに依頼していた、理想の形とするスリム、レギュラー、ワイドの3型文のパターンが完成。
このパターンを元に実際に1.裁断し、2.サンプルとして縫い上げ、3.サイズの修正点を割り出します。
パターンが上がったのでついにサンプルの縫製にはいるわけですがまずここで我々が使う生地について。
広島のお隣の岡山・児島がデニムの産地(もはや聖地)として名高いですが、
実際のところは尾道を含む備後地方全般にかけてが産地で、まーそれはそれはデニム専門の工場やらなんやらが多く、
誰もが知るような超ハイブランドのデニムを、地元のおっちゃんおばちゃん達が汗にまみれて生地作ったり裁断したり縫製したり洗ったりアイロンかけたりしているわけです。
ドーモくんのエプロンしたパーマのおばちゃんとかがヴアアアン!!ヴアン!!とけたたましい音で高速の工業用ミシンを操ってデニムを作る姿は時に神々しさすら感じます。
話がさっそく反れましたがぼく達がヒカリエ用に選んだ生地も、目玉飛び出るようなブランドの生地を作り続けている岡山の山奥の生地屋さんにある膨大な、それはそれは膨大な量の生地見本の中から三種類を厳選しました。
我々はセルビッチ(赤耳)しか使わないと決めているので、当然その三種類もすべてセルビッチです。
セルビッチをとっても簡単に言うと、
旧力織機と呼ばれる昔ながらのデニムの織り機で作られた生地で、
生地幅は一般的なものより遥かに狭く、同じ一反50mでも作れるデニムの数が大幅に少ない上に、
古い機械なので動きも遅く、一日に作れる生地量も少ないので希少価値が上がり高価になるというデメリットがありますが、
旧力織機でしか出ない風合いや色落ち具合はもちろんのこと、
普通の生地の両端はボソボソとしていて使えないのに対し、
旧力織機で折られた生地は両端が綺麗に始末してあり(赤耳)、裁断時やデザインに使えるという特徴があります。
画像で見てもわかりゃせんのでいつか直接触ってみて、できれば履いてみてほしいです。
裁断に入る前に、
生地を洗い、タンブラー乾燥にかける必要があります。
生地には「縮率」という面倒な問題がありまして、
要は生地というものは生ものなので伸縮する性質があり、その率は生地によって全然違うのです。
ぼく達の作ったパターンは「縮率0%」で出してもらっています。
つまり既に縮ませている生地での裁断を前提として作られています。
本来のデニムの製作手順だとパタンナーさんにパターンを作ってもらう以前に、
使う予定の生地を1m四方くらいに切ってタンブラーにかけることでどのくらい縮んだかをあらかじめ確認し、
「この生地は縮率が○○%です」とパタンナーさんへ伝え、
パタンナーさんは縮率分を加えたパターンを製作してくれます。
その後はその縮率が入った(若干大きめに作られた)パターンを使い、
生の生地を裁断して縫製し、
製品として何十点、何百点と仕上がったあとにそれらすべてをばかでかい洗濯機(通称:釜)に放り投げ、
一気に洗いをかけて縮ませることで、最終的には当初狙っていたサイズになる、
という工程を組みます。
ぼくらの場合は受注式のオーダーメイドのため、
生地もお客さんが選べるようにしたくて最低でも3種類~10種類くらいは所有する予定のため、
縮率が特定できませんでした。
なので縮率は0%で出してもらい、
「裁断前に自分達で洗いをかける」という手間を負うことで、
「生地の選択肢の自由を得る」という判断をしました。
※タンブラー後のいわゆるワンウォッシュド・デニム。
新品の生地についている糊が取れ、生地は縮み、本来の風合いが出る。
そしてそのタンブラーをかけた生地を、縮率0%で出してもらったパターンを使い裁断します。
今回の目的は出来上がったパターンが狙い通りのシルエットになっているかの確認(=1stサンプル縫製)です。
まだ各サイズ展開(グレーディング)はしていなくて、
マスター(サイズ3。いでゆうじジャストのサイズ)のみ作り、
実際にいでゆうじが縫いあがったサンプルを履いてシルエットを確認し、
調整が必要な部分を割り出してパタンナーさんに修整(2ndサンプル)を依頼します。
最終的に各型のマスターがOKになるまではサイズ展開ができません。
そのこだわりと時間との戦いは以下の画像でご想像いただくことにします。
こんなかんじです。
結果的に言うとどれも基本的にイメージと大きく外れることはありませんでしたが、
バックシルエットのおしり部分のたるみ方に強いこだわりがあるため全サイズ後ろ身頃の尻ぐりの曲線の修整と、
パターンに指示として記載されているステッチの位置や幅などの修整点を出しました。
これを再度パタンナーさんのもとへ持っていき、修整したものを再度裁断して縫い上げ、
完璧なマスターパターンを追求していくっちゅーわけでございます。
着物⇔デニムという相反する服のあいだを行ったりきたりする日々!
今日のおまけはうちで飼ってるハリネズミのちゅーたろうの入浴シーンです。
かわいいやつですが脅威的なまでの快便なので常にうんこまみれです。
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