着物を解体し、再構築する。 Vol.1「表現とコンセプトについて」
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ユウジ 記事
前回はオーダーメイドジーンズのパターンについて書きました。
無事にパタンナーさんへの発注も終わり、ひと安心して尾道のアトリエへ戻る。
ひとまずパターンが上がるまでの一週間はデニムから離れ、展示会用の服作りに入ることに。
よっしゃいくぜ!とナルワチャンと気合いをいれて服作りに着工する。
とここで危機に直面する。
僕はなんと、なにをつくればいいのか考えていなかったのです。
本当にびっくりしましたが、
とりあえず暑いのでウーロン茶でも飲みながらアトリエ前の海岸でなにつくろうか考えることにした。
やみくもに服を作っても意味がない。
ヒカリエaiima-1という場所、
展示まで一ヶ月という限られた期間、
そして今現在の自分自身が置かれた環境から、どのような服を作るのが自然かつ最適なのだろうかを考えた。
今まで散々、10年以上、頭の中ではあらゆる服を作っては壊し作っては壊してきた。
高校の頃から毎週群馬から東京まで行っていろんな服と人に触れ、それはいつしか世界の民族服を見に行く旅になり、
頭のなかではずーーーーっと、こんな服やあんな服を着た人達を延々と想像してはスケッチしてきた。
でもその膨大なデータに依存するのはもうやめた。
そういう一見武器になるような情報は損得で考えたら誰もが使うべきだと考えるのだろうが、
すべての表現体は「うまく使おう」という脳内のフィルターを通せば通すほどノイズが入る気がしている。
情報がどれほど先鋭的で価値のあるものでも、その価値を必死に守ろうとしながら表現としてアウトプットした途端、
まるで価値を感じられないペラッペラなものとなって出力される。守ろうとしたことによる手アカのようなものを感じる。
おそらく頭ではない、心と呼ばれるもの、もしくは内臓や皮膚を通じて直接「感覚」へダイブしてきたイメージを、
なるべく脳を介さずスコンと外へ出した(出せた)ときが一番いい。
だから僕は即興が好きだ。点としての瞬間だけが紡いでいく連鎖に、頭を使って作為的に良くしようとした瞬間全てが崩れ去るという中で偶然を必然に転換された点だけが時間を裂いていくあの感覚こそ、表現の境地な気がする。
人間の生々しい感覚が、灰野敬二先生風に言うならば魂が、むき出しになっていくあの感覚。
ああいうのが一番いいと思う。
つまりライブ感。今ぼくは尾道にいるというライブ。
こうして自分のアトリエの前でウーロン茶飲んでるというライブ。
そしてこのウーロン茶に至るまでの経緯、そのリアルがどういったものだったかはぼくにしかわからない。
その経緯、家探しをしていた頃に空き家で見た、
おそらく「どうすればいいかわからない」ままタンスに放置された古い着物達の事を思った。
昔は利用価値があったが今は時代に取り残され、感情も含まれているため簡単にゴミとして捨てることもできず、
とりあえず蓋をされ、とりあえず邪魔にならない場所に置かれ、
ただ無目的に朽ちるのを待っているだけのような存在だった。
おそらく今後いくら時が流れようとも、その着物達が再び目的を持つことはないのであろうことは確かだった。
あれをなんとかするいい機会なんじゃないか、
それらをどういう服にするかは見えてないけど、
それこそ即興で作っていけばいいんじゃないか。
直感が純粋であればあるほど、それが正しいという事を裏付けるような理由がわさわさと連鎖的に派生してくる。
ヒカリエでの展示には「ファッション×エコ」というテーマがあって(忘れてたけど。)それにもバッチリつながる。
偶然だけど、時代性を考えれば必然的にそうなるのだろう。
そして今の尾道があるのはまさにこの思考から再発展を遂げたということにも気づいた。
今の尾道の観光業の再発展には、尾道に魅力を感じて移り住んだ移住者達の功績が大きい。
当時の尾道の「朽ちていくだけの空き家問題」をポジティブに捉え発足されたのが
家探しの頃から今現在もお世話になっている尾道空き家再生プロジェクトであることに気がついた。(当てつけかもしれんがちょうど先週7月7日で立ち上げ10周年)
尾道の山の斜面に無数に放置された、法律上の問題から壊すこともできない空き家達。
そこに移住者という新しい血を入れてオモロい事してもらって、10年を経た今、実際に尾道はだいぶオモロい事になってる。
それを家じゃなくて服でやろうとしたときに、尾道の人たちならすんなりと理解してくれる気がした。
というわけで決まりました、
尾道の空き家に利用価値ナシと認定されたまま死を待つだけの着物達を集め、
その着物達に対する同情は一切せず、ただ単に生地としての利用価値を直視して、
この時代を生きている人の意識に沿った形に再構築する。
そんなかんじです。
つ
づ
く
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