生き恥を晒して 2016/02/01
公開日:
:
ユウジ 記事
湘南新宿ライン19時16分発、
高崎発新宿行きの電車がゆっくりと動き出したとき、
心から確かな指示が来た。
「フィッシュマンズのSEASONだ。今のお前のための曲だ。」
なので今ぼくの脳内では佐藤伸治が
「夢の中。夢の中。ああ。ああ」と
意味不明な歌詞をつぶやいている。
あの人が伝えたかったことはなんなのか、
今この瞬間だけは確かに理解できる。
みゆきぼんと、おかあさんからラインがきている。
まだ見ていない。見たくない。
高崎駅のロータリーでぱたぱたと手を振りながら
がんばってねじゃあね気をつけてねを繰り返すえーすを前に、
ごめんねとしか言えなかった。
なんだ、ごめんねって。
泣きながら笑う彼女を見ながら、
ぼくは生きてるだけで周りを悲しませてしまうのかもしれないなと思った。
なんなんだろう。ぼくって。
なんなんだろうなほんと、意味わかんねえな。ほんと。
この手の皮膚一枚ぺろんとはがせば、
そこには肉も骨もなにもないような、
ぼく自身がスッカスカのただの空洞になったようなこの感覚。
心地よくも、悪くもない。
ただ確かに、
生きているような気がしている。
今ぼくはすっごいナマの、
井出雄士な気がしている。
もっとかっこよくて、たくましいと思ってた。
人に迷惑だけはかけずに生きたかった。
なぜか。嫌われたくないからだ。
なぜか。嫌われたら傷つくからだ。
そのくらいはできると思っていた。
でもどうやら無理らしい。
生きるだけで人に迷惑をかけてしまうのがぼくという人間であるなら、
むしろ「人に嫌われる」のがぼくの人生で、
嫌われて傷つくことで流れた血が、
ぼく自身なんじゃないか。
ついにやってきた出発日の今日は、
一日中晴れることも雨がふることもなく、
ずっと中途半端な曇り空だった。
電車乗る前に駅で買おうと思ってたユニクロのセーターは、
高かったからやっぱ買わなかった。
改札通ろうとしたらスーツケースがひっかかって、
隣の女子高生に笑われた。
それがぼくだ。
そしてあの女子校生が、
「昨日駅で改札通ろうとしたらさー」と
明日学校で友達に話して笑う事が、
ぼくが手に取ったあのセーターが、
まだ高崎モントレーのユニクロに置いてあるという事が、
明日の太陽がぼくの足跡を照らしたり、
雨がそれを流したりすることが、
ぼくという人間が生きている証拠だ。
それだけだ。
生き恥を晒して生きようと思う。
もういい。それでいい。
北上尾に着いた。
お出口は、右側らしい。
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