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2016年1月30日AM4:30

公開日: : ユウジ 記事

 

努力、ってなんなのだろうか。

「努力」という言葉を目にしたり聞いたりした瞬間、

生理的な拒絶(たぶん生理的だろう)とともに、

その拒絶が生まれたきっかけになったときの事を思い出す。

 

狂人と化していた時代があった。

どんな日々だったかを具体的に書くことはもうできないけどとにかく、

誰とも会わず、話さず、

意識がある間はファッションのことしか考えていなかった時代が数年続いた。

服以外の事を考えてしまったら自己嫌悪の地獄に落ちて死にたくなることがわかっていた。

それが努力と呼ばれるものなのか、今でもわからない。

ただ確かなことは、ぼくにはそこから先の結果がない。

あーだこーだなんだこーだ言って結局ぼくは別になにもしていない。

ぼくに今あるのは、深さが自慢の穴だけだ。

僕はただ掘った。すんげえ掘った。まじで掘った。

偉大な穴掘った先輩方の知恵を盗み、

こんなかんじかなっつって「経験」というスコップ使ってまぁ掘った。

掘っちゃいけないとこ掘っちゃって丸一年地獄の檻に閉じ込められたこともあった。

尊敬するデザイナーがみんなゲイであることを知ったぼくは自分がストレートであることに悩みに悩み、

ちんちん切り落とそうと裁断ハサミではさむとこまでいった。

あの時の自分の呼吸音をまざまざと覚えてる。

良いか悪いかを別として、

ぼくは深い深い穴を掘り、それだけが誇りだ。

 

果たしてそれは価値なのか。

穴の深さ、それ自体に価値はあるのか。

それが努力によるものだったのかどうかはどうでもいいことだとは思う。

「深く掘ること」のみを追求しなければ得られなかった事もあっただろう。

過去の「死に物狂いで穴掘ってる自分」に対して

「おーいそれ無駄だから出てこいよー」とは言わない。

むしろお前よく一人でそこまで掘ったもんだなぁと皮肉まじりに褒めてやりたい。

(汚れた服&ぼさぼさの髪で目だけが異様に血走っている井出雄士が目に浮かぶ)

ぼくはその他者としての自分に、「努力してるな!偉い!」とは口が裂けても言えない。

そんなこと言ったら「うるせんだよ誰だてめえ殺すぞ」って言うにきまってる。

なぜそんなひどいこと言うのか。

命がけで穴掘ってたからだ。

生きるために掘ってたからだ。

本気でそう思ってた。

 

そしてもう28だ。20代がもうすぐ終わる。

やりたい事をやれと言ってくれる人もいるし、言えないだけで心では応援してくれる人もいるだろうけど、

当人から見る現実の世間の目は全然甘くない。

1割にも満たないその声だけを聞くようにして生きるのは不可能だ。

28にもなった男が結婚もせず

服作りをするんだ!がんばるぞー!

なんて言ったら心は一瞬で血祭りにあげられるだろう。

だからもう周りには誰もいなくなった。

いわゆる「夢」を語る人達は24,5歳くらいでフェードアウトしてった。

懸命な判断だと思う!思ってしまう。

もうぼくもはっきり言って、きついし、生きてて恥ずかしくもなるし、

何度もう諦めて「すんませんぼくもやっぱいいっすかね」ってへこへこしながら境界線またごうとしたかわからん。

でもまたぎたくてもまたげない理由がぼくにはある。

見てるからだ。

汚い格好して髪ボサボサで目だけが異様にギラギラしている井出雄士二等兵が。

お前ふざけんじゃねえぞってものっすごい怖い声で言ってくるわけだ。

お前だけを信じてこんだけ掘ったんだぞ、って。

と、こんなことを世間様に「やりたい事をする理由」として述べたところで誰にもわかってもらえないわけで。

いいから働けと言われて終わりだ。

 

ぼくはこの穴を、どうすればいいのだろうか。

今、まさにその狭間にいる。2016年1月29日午前4時半。

ぼくは異常なまでに人を恐れている。

その恐怖心が、ぼくに穴を掘らせ、

掘ることで、人と交わることから逃げていただけだと、

穴から頭だけ出してる状態の今、思う。

逃げるために掘ってきて、ぼくを見てくださいというのは、

矛盾していることなのだろう。

だからまた穴堀りに戻るわけだ。そしてまた穴は深くなっていく。

「ぼくも仲間に入れて」と言いたいだけ。

それが怖い。どうしようもなく。

 

そこで井出雄士二等兵が「掘ってたらさっきこんなん出てきた」と紙切れを差し出す。

そこにはこう書いてある。

 

血を流しながら、にっこり笑え ――岡本太郎

 

答えはもうぼくの穴の中に充分にあるのかもしれない。

必要なものは揃ってるのかもしれない。

ぼくに今必要な事は思考の切り替えで、

まずこれ以上掘ることをやめる勇気を持ち、

穴から出て、泥にまみれたままこんなんありましたと人に手渡す勇気を持つ事だ。

汚らわしいと言われるだろうし、笑われるだろうけど、

それでもいいのかもしれない。

えーそんなのでいいならまだまだあるよこんなのもあるしこれもこれもこれもあるよ

と水を得た魚のようになっている井出雄士二等兵にドーナツあげて落ち着かせ、

彼と彼が死に物狂いで掘った穴を背にして、

結果をまだ持たない超凡人28歳のぼくは

群馬の冴えない片田舎の築50年の古民家からアホ面こいて堂々とここに宣言する。

 

服作りをするんだ!がんばるぞー!

 

 

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(Huawei P8lite ビューティーモード10にて撮影)

 

 

PS

こんなデザイナーの服買いたいって人いるのかなという疑問がほとばしっている。

 

 

 

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